病態
脳卒中とは、脳の血管がつまったり破れたりすることによって、脳が障害を受ける病気です。脳の機能はその場所ごとに決まっており、症状は虚血や出血などの原因によるものではなく、脳のどこを障害されたかにより決まります。
脳血管障害は虚血性病変(①脳梗塞)と出血性病変(②脳出血、③クモ膜下出血)とに分けられます。
①脳梗塞
脳血管の閉塞や狭窄によって、脳血流量が減少し虚血状態となり、脳細胞に酸素やブドウ糖が供給されなくなるため、脳細胞が不可逆的な状態(壊死)となることをいいます。
脳梗塞は、脳血栓症と脳塞栓症(心原性脳塞栓症)に分けられ、脳血栓症はさらにラクナ梗塞とアテローム(粥状)血栓性脳梗塞に分類されます。
脳血栓症
動脈硬化症が基礎にあり、血管の内腔が狭窄しているところに血栓が形成されて生じます。脳梗塞になる約半数の人は、前駆症状として一過性脳虚血発作が起きてから脳梗塞を発症しています。
この一過性脳虚血発作は突然発症し、5〜30分、長くても24時間以内という短い時間のあいだに症状が改善するものを指します。これは頸動脈あたりで形成された血栓が抹消に流されて閉塞するものですが、この血栓は微小血栓でありすぐに溶けてしまうため、症状は短時間に回復します。しかし、その後に大発作をきたす危険性が高いことから注意をする必要があります。
脳血栓症の原因は高血圧、喫煙、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病などがあり、発症は睡眠中など血流が低下した時などに多く発症します。
脳塞栓(心原性脳塞栓症)
心原性脳塞栓症は最も急激な症状の発現し、発症後数分で症状が完成します。脳血管が塞栓により突然に閉塞することから、片麻痺などが突発するのが特徴です。脳血栓症とは違い、一過性脳虚血発作などの前駆症状は認められず、急性期には閉塞した部位の再開通がみられることが多く、一度起こった虚血によって脆弱となった血管で、出血性脳梗塞を起こしやすいです。
心原性脳塞栓症は不整脈などの心疾患が原因となることが多く、その中でも心房細動、心筋梗塞、僧帽弁狭窄症、心内膜炎などの心疾患がある場合は、心臓内に生じた血栓が脳血管に流れ込み、脳動脈を閉塞することにより発症しやすいです。
②脳出血
脳出血とは、何らかの原因により脳内の動脈が破れてしまい、脳内に大出血を起こす病気です。血管から溢れた血液は、血腫という血の塊を作り、その血腫が脳に直接ダメージを与えたり、血腫が大きくなることで脳を圧迫し、頭蓋内圧が上昇し脳の機能に様々な障害を生じます。この頭蓋内圧亢進症状は、脳梗塞に比べて症状は重く意識障害は出現しやすいです。
症状は出血の発生部位により異なり、出血部位としては被蓋が圧倒的に多く、次いで視床に起きやすくなっています。好発年齢は50〜70歳であり、高血圧に起因することがほとんどで(高血圧性脳出血)、動脈硬化や加齢などの原因が加わることによりさらに脳出血のリスクが上がります。
③クモ膜下出血
脳は外側から順に硬膜、クモ膜、軟膜という3枚の膜で包まれています。脳全体を包むクモ膜と軟膜のあいだには、脳脊髄液が流れており、この部分をクモ膜下腔といいます。この部分に様々な原因によって出血が生じるものをクモ膜下出血といいます。
クモ膜下出血の原因となる疾患は非常に多くあり、外傷によるもの以外で代表的なものは、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、高血圧性脳内血腫、もやもや病などが挙げられますが、脳動脈瘤の破裂によって発症するものが9割近くであるといわれています。
発症すると、それまで経験したことのない激しい頭痛が突然生じ、嘔吐や吐き気なども伴います。よく、突然ハンマーで後頭部を殴られたような感覚として痛みを表現されることがあります。
クモ膜下出血は後遺症が残るリスクが非常に高く、危険因子は喫煙、高血圧、過度な飲酒などです。
主な症状
片麻痺(運動麻痺)・・・
身体の左右どちらかに起こることが多く、運動神経は脳幹で左右に交差しているため損傷を受けた脳と反対側に麻痺の症状が出ます。麻痺においては、指先の細かい動きの障害から手足が全く動かなくなるものもあります。
頭痛・・・
脳血管疾患による頭痛は、動脈瘤が破裂したものであったり、頭蓋内圧の亢進によるものであったり、脳の血管が詰まったり閉塞を起こした際に生じるものですが、嘔吐や吐き気、意識障害や神経症状を伴うことが多く、大きな後遺症が残る可能性もあるので注意が必要です。
構音障害・・・
脳血管疾患による麻痺のため、唇や舌など言葉を発するための部分を上手く動かすことができないために、声がでにくかったり、ろれつが回らなくなり上手く発音ができなくなるものをいいます。
感覚障害・・・
片麻痺と同様に左右どちらかに現れます。麻痺側では、冷感や温感がわかりにくくなるので、やけどや低温やけどに注意が必要となります。また、しびれや触られた感覚も乏しくなるため、知らないうちに傷を負っていることもあります。
小脳失調・・・
小脳は体のバランス(平衡感覚)を司っており、ここが障害を受けることで体のバランスがとれなくなります。ふらふらして立っているのが困難となったり、座っていても体が揺れたり、めまいが頻発するなどの症状が出ます。
高次機能障害・・・
脳の機能で、言語や記憶、注意、情緒などの認知機能に起こる障害のことをいいます。
例として、会話や文字で表現したり理解できない(失語)、疲れやすくなる(易疲労性)、身体を上手く認識できない(失認)、怒りっぽくなる(易怒性)、注意力が散漫になる(注意障害)、記憶が悪くなる(記憶障害)、時間や場所が分からない(見当識障害)、こだわりが異常に強くなる(固執性)などが挙げられます。
ゲルストマン症候群・・・
ゲルストマン症候群とは失書(文字が書けない、話を理解できない)、失算(簡単な計算ができない)、左右失認(左右が分からない、物の距離感がつかめない)、手指失認(指ごとの認知ができない、指を上手く操作できない)などの症状が出るものをいいます。
日常生活では、会話が成り立たなかったり、時計が読めなかったり、ボタンがつけられなかったり、爪切りや料理ができなかったりします。しかし、これら全ての症状が出るわけではなく、ほとんどの人はこのうちの部分的な症状が出てきます。
排尿障害・・・
脳の損傷により、脳からの指令がうまくいかないために、膀胱や尿道の働きが障害され排尿障害を生じます。
脳血管疾患による日常生活のリスクや障害
手足が思い通りに動かせない・・・
脳血管疾患により手や足に麻痺が残り、脳からの指令が上手く伝わらないので手や足の運動障害がでます。また、筋肉が緊張してしまうことで(痙縮)、手や足が動かしにくい、勝手に動いてしまうことなどがあります。(不随意運動)
立つ・歩くなどの動作が困難・・・
脳血管疾患により麻痺が残り、運動障害や痙縮などが現れます。これらにより、関節が上手く曲がらない、手足に力が入らず動かしにくいなどにより立つ・歩く動作に支障を来してしまい、転倒の原因にもなります。
転倒
…脳血管疾患による下肢の麻痺や痛みの影響で歩行困難となり、転倒しやすくなる可能性があります。
衣服の着脱が困難・・・
脳血管疾患により、手や足に麻痺が残り指先の細かい動作も上手く行えなくなります。また、曲がった状態で固まってしまうなどで、腕が上がりにくいため袖を通しにくく、ボタンも着脱が難しくなってしまいます。食事や洗面作業も同様に困難となってしまいます。
物忘れや記憶障害がでる・・・
脳血管疾患により脳で記憶を司る部分(大脳の前頭葉)が障害されると、新しいことを覚えることや過去のことを思い出せないなどの症状が現れます。また、これは症状から認知症と間違われることがあるので注意が必要です。
食べ物の喉の通りが悪くなる・・・
脳血管疾患により、喉周辺の筋肉が麻痺することにより、食べ物を飲み込むことが困難になる、無意識によだれが出る、飲み込むと気管に入ってしまう(誤嚥性肺炎)などの症状が出ます。特に誤嚥性肺炎は、水分を摂取した時に起こしやすいので注意が必要です。
言葉がでにくい(ろれつが回らない)・・・
脳血管疾患により脳で言語を司っている部分が障害されたり、舌や唇が麻痺することによって、ろれつが回らない、言葉が出てこないなどの言語障害症状が出ます。また、発音が上手くできなくなるので、日常での会話が困難になることがあります。
視野が狭くなる(視野障害)・・・
脳血管疾患による片麻痺と同様に、視覚を伝えている神経(視覚野)の片側が障害されることにより、視野が欠ける、視力が低下するといったような症状(視野障害)が出ます。具体的には、両眼視野の同側半分が見えなくなり(同名半盲)、日常生活でも転倒の原因となるので注意が必要となります。
筋力低下
…麻痺や痛みにより、運動機会や運動量が減り、徐々に筋力が低下しく可能性があります。筋力低下により、歩行、起立、移乗、寝返りなどができなくなると介助量も増えていく可能性があります。
関節拘縮
…麻痺や痛みにより、運動機会や運動量が減ったり、関節を動かすことが少なくなったりすることで関節拘縮をきたす可能性があります。拘縮を起こすことによって、関節の可動域が制限され更衣や運動に支障をきたします。
寝たきり
…麻痺や痛み、関節拘縮により、運動機会や運動量が減ると、筋力の低下が進み、寝たきりになってしまう可能性があります。
褥瘡(床ずれ)
…寝たきり状態や車椅子生活などをきっかけに、同じ部位への圧迫が続き血流が滞ってしまうと、皮膚の病変(褥瘡)が生じる可能性があります。また排泄障害によりおむつを使用すると、むれた状態が続いてしまい褥瘡の原因となってしまいます。脊髄損傷は皮膚の感覚が乏しいため、皮膚の傷や褥瘡に気付きにくくなるので注意が必要となります。お尻(特に仙骨部)や体の背面、踵(かかと)などに好発し、ひどくなると潰瘍や細菌感染を起こす可能性があります。
脳血管疾患後遺症に対するリハビリの方法、効果
一度回復した機能も、退院後何もしないでじっとしていると再び機能低下が進みます。退院後のリハビリテーションを続けることはとても重要であると言われています。脳梗塞により低下した能力を、維持・向上させることを目的として、主に関節可動域訓練、起立運動、麻痺した手足の(自動)介助運動、歩行訓練、筋力トレーニングなどを行います。ご本人様の機能に合わせたリハビリを実施することで日常生活を快適にします。また、杖や歩行器、手すり、装具などを使用して日常生活に近づけた実用的な訓練を行い、より日常生活での負担を軽減させます。
脳血管疾患後遺症に対するマッサージ(鍼)の方法、効果
脳梗塞により麻痺した筋肉に対してマッサージを実施することで、痛みの軽減、筋の血流改善、柔軟性向上、筋緊張の緩和の効果が期待できます。さらに、固まった筋肉や関節に柔軟性や可動性が生まれ、手足が動かしやすくなることで拘縮や可動域制限などの後遺症の治療につながり、リハビリと併用することでより大きな効果を生むことができます。
脳血管疾患の方の対応で当院が大切にしていること
脳血管疾患は、それぞれの疾患で原因の違いにより症状の出方や対処法(治療法)が変わってくので、そこの見極めが必要となります。脳卒中では、発症する前に前兆(一過性脳虚血発作)が現れることが多いので、一時的な脳卒中の症状を見逃さないようにすることが重要です。
当院では、施術により血圧のコントロール、拘縮予防、筋緊張の緩和、褥瘡予防などお身体の状態の改善だけでなく、患者様の精神的な不安の除去や、歩行、立ち上がりなどに対する恐怖心の克服などにも全力で努めてまいります。
また、デイサービスなどをご利用の場合は、事業所同士で連携を取りながらADL(日常生活動作)の遂行が容易になるように施術を行なっております。
「脳血管疾患」に困ったらリーフ訪問治療院へ
リーフ訪問治療院では、積極的に脳血管疾患に対するリハビリ、鍼灸マッサージを行っております。岡崎市、安城市、幸田町エリアでの脳血管疾患の患者様は是非一度ご連絡ください。ご自宅や施設へ訪問し、丁寧な対応を提供いたします。
さらに、リーフ訪問治療院ではご高齢者様や障害がある方で、通院が困難な方に対して医療保険を用いた施術を行ってまいります。是非お気軽にご連絡ください。