病態
脊髄は、脊椎が形成している脊柱管の中で保護されている神経の束で、頭部から腰部まで連続している縦に長い構造をしています。脊髄には、脳から発せされた指令を体の各部位に伝えたり、体からの信号を脳に伝えたりする役割を持っています。脊髄に存在する神経は四肢の動きや、冷感、温感、位置を把握する能力などを司っています。また排尿や排便、命に直結する呼吸も支配するなど様々な重要な役割を担っています。脊髄損傷とは様々な原因を元に、この脊髄が損傷を受けたものをいいます。脊髄が損傷を受けると、運動や感覚などに障害が生じ、麻痺などの後遺症が残ることもあります。脊髄は基本的に、一度傷ついてしまうと二度と再生することができないので、日常生活に大きな支障をきたすこととなります。
脊柱の分類に合わせて頸髄、胸髄、腰髄、仙髄と分かれており、これらの損傷を受けた部位により現れる症状が異なります。
脊髄損傷の原因は主に、交通事故や転倒、スポーツなどで一度の大きな外力(外傷)により、背骨に強い衝撃が加わることで、脊髄に損傷が生じて引き起こされます。その中でも、転倒による脊髄損傷は高齢者において頻度が高くなっています。また、頚椎症や後縦靭帯骨化症や骨粗鬆症などがある人は、脊髄損傷を引き起こすリスクが高いとされています。
主な症状について
呼吸障害・・・
上位頸髄(第3頸髄以上)損傷の完全麻痺では、肋間筋や腹筋や横隔膜など呼吸にたずさわる筋肉(呼吸筋)の麻痺により、自発呼吸が消失してしまいます。したがって、一刻も早く人工呼吸を確立できなければ致命的となる恐れがあります。下位頸髄の損傷においても呼吸筋の麻痺は多少出るので、自発呼吸が十分にできない場合もあります。
循環障害・・・
第5胸髄より頭部側の脊髄損傷では、自律神経に影響が起き、副交感神経優位の状態となるので、徐脈と抹消血管の拡張により低血圧を生じます。
排尿障害・・・
初期の脊髄ショック(※1)の時期には弛緩性麻痺を起こし、尿閉に陥ってしまうので導尿が必要となります。回復期になると反射性膀胱(※2)や自律性膀胱(※3)という状態になります。
※1 脊髄ショック・・・
重度の頸髄損傷では受傷直後から、損傷レベル以下の運動、知覚機能や脊髄反射も全て消失し弛緩性麻痺となります。脊髄ショックからおよそ24時間で回復し、その後は痙性麻痺となります。
※2 反射性膀胱・・・
脳内の橋という部位にある排尿中枢と仙髄との連絡が絶たれることで起こる排尿障害です。尿が溜まると尿意もなく無意識に排尿筋が収縮し、尿失禁を起こしてしまうものです。
※3 自律性膀胱・・・
脊髄損傷により膀胱〜仙髄の求心路と遠心路両方の伝達経路が障害されることで起こるものです。求心路障害により尿意がなく、遠心路障害により排尿反射が起こらないので、排尿を行うことができず、膀胱内に尿が貯留し続けてしまいます。
消化器障害・・・
脊髄損傷の麻痺により、胃腸の動きが悪くなることで、麻痺性イレウス、胃拡張、便秘などを伴います。また、急性期にはストレスによる胃潰瘍で大出血の可能性があります。いずれも、痛みや感覚に乏しいため手遅れとなる可能性があるので注意が必要です。
さらに、損傷を受けた脊髄が司る神経の領域より下の部分に、体の麻痺や感覚障害が現れます。麻痺は損傷の程度により「完全麻痺」か「不完全麻痺」かによって特色が異なります。完全麻痺は、脊髄の機能が完全に失われた状態となります。脳と体との指令が途絶えてしまい、動かせなかったり感覚が全くないという状態です。不完全麻痺は、脊髄の機能の一部が働かなくなり、一部は残っている状態です。軽度な場合はある程度体を動かすことができますが、重症例では感覚のみが残るケースが多いです。
脊髄損傷受傷から時間が経ち麻痺が慢性化してしまうと、筋肉が硬くなったり、けいれんを起こしたりすることもあります。また、脊髄が損傷を受けると、多くの場合で排泄障害をきたすことがあります。
脊髄損傷による日常生活のリスクや障害
物が使えない・・・
麻痺の程度によっては(第8頸髄以上)、手や指が上手く使えないためハシを使って食事をしたり、鉛筆で文字を書くことが困難となります。しかし、特殊な装具を使用することによって可能となる場合があります。
歩行困難・・・
下肢も麻痺してしまうため、歩行は難しく転倒の危険もあるため、杖や車イスが必要となります。長時間の座位姿勢では褥瘡のリスクがあるため注意が必要となります。
筋力低下
…麻痺や痛みにより、運動機会や運動量が減り、徐々に筋力が低下しく可能性があります。筋力低下により、歩行、起立、移乗、寝返りなどができなくなると介助量も増えていく可能性があります。
転倒
…筋力低下や麻痺、痛みの影響で歩行が不安定となり、転倒しやすくなる可能性があります。
関節拘縮
…麻痺や痛みにより、運動機会や運動量が減ったり、関節を動かすことが少なくなったりすることで関節拘縮をきたす可能性があります。拘縮を起こすことによって、関節の可動域が制限され更衣や運動に支障をきたします。
寝たきり
…麻痺や痛み、関節拘縮により、運動機会や運動量が減ると、筋力の低下が進み、寝たきりになってしまう可能性があります。
褥瘡(床ずれ)
…寝たきり状態や車椅子生活などをきっかけに、同じ部位への圧迫が続き血流が滞ってしまうと、皮膚の病変(褥瘡)が生じる可能性があります。また排泄障害によりおむつを使用すると、むれた状態が続いてしまい褥瘡の原因となってしまいます。脊髄損傷は皮膚の感覚が乏しいため、皮膚の傷や褥瘡に気付きにくくなるので注意が必要となります。お尻(特に仙骨部)や体の背面、踵(かかと)などに好発し、ひどくなると潰瘍や細菌感染を起こす可能性があります。
過高熱や低体温・・・
高位胸髄損傷をすると、麻痺した部分に汗をかかないため放熱が上手くいかず、高熱が出ることがあります。また反対に寒い時には、体温が上がりづらいので、低体温となってしまいます。
脊髄損傷に対するリハビリの方法、効果
脊髄損傷の方にリハビリを行うことによって、体の動きをよくする、筋力向上、血流改善などが期待できます。麻痺により動かしづらくなった四肢を最大限に動かすことで、固まりつつある関節の可動域を改善させたり、低下傾向にある筋力を向上させ、自力での活動量を増やし、移乗や食事、入浴など日常生活での負担を軽減させます。
脊髄損傷に対するマッサージ(鍼)の方法、効果
脊髄損傷の方にマッサージを行うことによって、麻痺した筋肉の血流改善、疼痛軽減、筋肉の柔軟性向上、関節の拘縮予防などが期待できます。マッサージによる血流改善に関しては、褥瘡の予防や痛みの軽減にも効果的となります。また、残存した筋肉の疲労やストレスなども軽減させることが可能です。
脊髄損傷の方の対応で当院が気を付けていること
脊髄損傷では比較的早期に将来の後遺症が決まるといわれていますが、私たちが携わることができるのは回復期以降の過程となるので、いかに残存した機能を維持させるかというところを重要視して対応します。
施術によりご本人様が日常の中で、以前よりできることが多くなった、体が動かせるようになった、体が楽になったと感じられるような施術を目指します。また、ご本人様のみでなく介護に入られている方のご負担が少しでも軽減されるように施術を行ってまいります。
「脊髄損傷」に困ったらリーフ訪問治療院へ
リーフ訪問治療院では、積極的に脊髄損傷に対するリハビリ、鍼灸マッサージを行っております。岡崎市、安城市、幸田町エリアでの脊髄損傷の患者様は是非一度ご連絡ください。ご自宅や施設へ訪問し、丁寧な対応を提供いたします。
さらに、リーフ訪問治療院ではご高齢者様や障害がある方で、通院が困難な方に対して医療保険を用いた施術を行ってまいります。是非お気軽にご連絡ください。